島牧村においでよ
島牧村においでよ

さくらの咲くところ 吉澤俊輔

Profile

吉澤俊輔(よしざわ・しゅんすけ)
さくらの咲くところ 代表

1978年北海道島牧村生まれ。幼少期より、海と山に囲まれた島牧の豊かな自然の中で育つ。島牧ユースホステルを営む父の影響もあり島牧村を訪れる人のガイド役としても日夜活動する。隣接するサスティナブルな暮らしを目指した「はるの家」は自身でリノベーションした。自然と共にある暮らしを提案する「さくらの咲くところ」の活動も展開。自然栽培での田んぼや畑もはじめ、自給率の極めて高い生活を実現していることから、"島牧完成型" や "仙人" などとも呼ばれている。

Relay Baton Introducer

リレー前話、ニセコLalala Farm 服部吉弘さん のエピソードテーマは「”多様性を受け入れ 発酵と循環へ繋げていく”」でした。
微生物の世界の深いお話、発酵の原理などレクチャーを受けたリレーバトンは、北海道ニセコ町の服部さんから島牧村の吉澤俊輔さんへと紡がれていきます。
これまでのリレー掲載者さまが一様に絶賛するその暮らし方の"終わりなき"取材を始めます。

吉澤俊輔氏のもとへ

吉澤俊輔氏をビアストラのリレーインタビューへご紹介くださったのは第7話の服部吉弘氏。

服部氏: 「こんど島牧村で麹菌のワークショップを俊輔の家でやるからおいでよ。そこでリレーインタビューの話と紹介をするね。話としてとっても良いと思うよ」

やがて2017年の2月末。島牧ユースホステルを訪れ、そこに隣接する「はるの家」で吉澤俊輔氏に初めてお会いすることができました。

吉澤俊輔氏は言う

「対談のように何かをお話しして、記事にするって言うのは少々苦手で、それよりもこの島牧を色々案内しますので、その体験を記事にしてくれませんか?」

服部氏: 「それいいねぇ、めっちゃ羨ましいわ」

そう。服部氏と吉澤氏のスタイル同様、一切の無駄な贅肉のない会話は、取材の方向性を一瞬で決め、本記事はビアストラとしては初の体験レポート風記事になりました。

これからゆっくりと歳月をかけ、島牧の四季の美しさを、楽しさを、喜びも悲しみも、厳しさも、様々にお伝える役割の元、記事の充実を図りたいと願い、そう思ってます。

何卒、末長く本記事とお付き合いくださいますようにお願い申し上げいたします。

どうぞお時間ある時にごゆっくりと、ご覧くださいませ。

 

北海道島牧村
北海道島牧村
さくらの咲くところ / 吉澤はる
吉澤はるちゃん(2歳)

極上の自家製オーガニックパン

極上の自家製マヤパン
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極上の自家製マヤパン
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薪ストーブで暖をとる季節。朝食にはその薪ストーブで焼く自家製のパンが並ぶ。

北欧ノルウェー製のJØTUL(ヨツール)、オーブン機能がついているわけではないが一工夫するだけで石窯で焼いたようにクープが綺麗に開き、クラストがパリッとした本格的なパンも焼けてしまう。

ブナの森からの湧き水に、島牧の海水から手作りしたミネラルを豊富に含んだ塩、酵母菌はご近所の庭の無農薬杏梅からおこした自家製酵母を使うという、極めて自給率の高いパン。小麦粉は北海道産の春よ恋、キタノカオリ他、厳選したものもブレンドしている。

自然栽培の畑で小麦も育てていて、いつか自給率100%のパンも焼きたいという野望をいだいているそうだ。

木々の特性を生かした手作りの食器類は木工作家としての吉澤俊輔氏の一面でもある。木製のスプーンやフォークは子供にも安全で、木のお皿は食材をより魅力的にしていく。

日常的に食すパンだから、マヤパンのその “違い” をはっきりと感じることができた。

極めてエネルギーが強いにもかかわらず、味も香りもとてもさわやかで、喉越しにも何もひっかかるものがない不思議さを感じた。

訪れる多くの方がきっと、島牧到着の翌朝にこの奇跡のパンを味わう。そして都会とは別世界に来た実感、人として居心地の良さを追求する島牧の在り方とその香りに目覚め、喜びに包まれることでしょう。

若しくは「これが本当なんだ」と、本質的な生き方に涙の流れる朝になるのかもしれません。

 

 

樹液の恵み
イタヤカエデのメイプルシロップ

楓の木 メイプルシロップ 島牧村
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楓の木 メイプルシロップ 島牧村
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イタヤカエデの樹液からメイプルシロップを作る。

3月、まだ雪深く静まりかえった森の中、樹々たちはまだ眠りについているようにも見えるけれど、もう春を迎える準備を始めていた。

葉を広げ花を咲かすために大地から勢い良く水を吸い上げ、これが樹液となる。

取材時の3日間でとれた樹液は約1ℓ。これを薪ストーブで1/40程に煮詰め不純物を取り除けばメイプルシロップが出来上がる。

多様な木々が無数に自生する中、俊輔氏はたった2本だけの木を選び、僅か少量の樹液しか採取しなかった。

「必要なものを必要なだけね。自然の循環の輪をこわさないようにね」

神聖なる “聖水” を頂くその心構えはどのように持ち、どのように食して楽しむことは許され、どのように感謝をすれば良いのだろうかと、密かに抱いていたその疑問に対する答えだった。

この樹液の味を伝えることはきっと、どんなに筆力を持ってしても「体験」には叶わない。

春を迎える数多くのアクティビティの1つがここに、神聖な時と場所に確かに存在している。

また来年も聖水を汲みに、楓の樹液がとれる僅か2週間の間を、ここ島牧村で過ごしたいと強く願う。

 

あんこう鍋

あんこう鍋・吊るし切りで捌いてみた【閲覧注意】
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あんこう鍋・吊るし切りで捌いてみた【閲覧注意】
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「船の帰って来た音がする!」俊輔氏のその言葉を聞いて漁港へ向かう。あんこうを仕入れに行くのだ。

ここ島牧では魚屋さんに魚を買いに行くのではなく、漁港で今漁師が船からあげたばかりの魚を買うことができる。

漁師たちは真っ暗闇の海へと船をだし、早朝の港をたくさんの鱗で光り輝かせている。

朝、漁港で魚を買い、昼は畑から野菜をとって、夜は仲間たちと鍋料理が食べられる。自分たちの命が自然と繋がっていることを実感する暮らしがここにはあった。

海と山の狭間の村ならではの、とびっきりに贅沢なご馳走の1つがあんこう鍋です。

食事、お酒、仲間、そして音楽。

その全てが、益々の笑顔と、確かな幸せを発酵させ循環していく。

「これ以上のものはない」

どこかで誰かが言っていたその言葉が、ずっとリフレインしている。

 

次回ゲストのご紹介

次話 リレーインタビューのご紹介

—— 俊輔さん、島牧取材はきっと未来永劫続いていくような気がしますが、ビアストラのリレーインタビューに誰かを指名しご紹介をお願いいたします!

俊輔:そうだね、もちろんたくさん紹介したい人がいて1人に決めるのはとても難しいんだけど…そうだね、やっぱり、日々お世話になっている波多野さんをビアストラのリレーにご紹介しますね。

—— 波多野さんと俊輔さんのご関係は?

俊輔:波多野さんはもう20年以上農薬を使わずにお米を作っている農家さんです。島牧農業振興会の代表として、島牧を盛り上げる活動もしている方です。

僕たちの田んぼも波多野さんにアドバイスをいただいています。一緒にイタヤカエデのメイプルシロップを取りに行ったのも実は波多野さんの山だよ。

—— あの素晴らしい山の

俊輔:はい、そして島牧を自分とは違う角度でちゃんと教えてくれるから、ホッティには一度、しっかり話を聞いて来てほしいなと思います。

マヤ:うんうんそうそう。話はすっごく長くなると思うけど(笑)

—— はい、ウェブなので何万文字でも大丈夫です(笑) しかし俊輔さんに何かを教えられる立場の方というのもまた何か凄い方ですね。島牧をまだずっと取材しててもいいですしね。

俊輔:うんそうだね、で、ホッティまた次はいつ島牧にくるの?(笑)

—— この島牧村の取材に終わりがなく、終わりが来て欲しくもない気持ちです。

俊輔:また、はやく島牧村においでよ(笑)

—— ありがとうございます。なんでしょう…いまのその一言より嬉しい言葉などないなと思えてしまうのは…。微力ながら島牧村とさくらの咲くところの活動を、広くご紹介できる記事を作りたいと思います。引き続きどうぞ宜しくお願い致します。

ありがとうございます。

俊輔:うん、ありがとう。7月にはさくらんぼ、ウニも美味しいから食べにきてね。

 

オヤスミはるちゃん
オヤスミはるちゃん

そして取材中におきましては、奥様の吉澤茉耶さんに、本当に沢山のサポートしていただきました。茉耶さん本当にありがとうございました。

LINK

Staff

編集後記

本稿の吉澤俊輔氏の取材は今後も継続してその活動をより広めていきます。

大自然における12ヶ月のアクティブティだけでも、コンテンツとしてお伝えしたいことは多岐に渡り、何よりスケールも壮大で、危険な撮影も伴います。しかし、長い年月と月日をかけて、島牧村や吉澤俊輔氏のライフスタイルを正確に追求しお伝えしていて、読者さまの中に何かのきっかけを埋めることは、とても大きな喜びとなります。

「ぜひ体験してみたい!」と、思う方はどうぞお気軽にお声がけくださいね。

長文になりましたが本記事をご覧くださいまして誠にありがとうございました。
また更新していきますので是非チェックしてください。

そして、俊輔さんのリレーバトンは、北海道島牧村で30年間無農薬でお米作りをされている波多野信夫さんへ繋がることになります。

島牧村をまた別の角度から理解を深めるのに相応しいお話をと、波多野信夫氏以降のリレーにも期待が高まります。

堀田健志